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【履正社高校】第101回高校サッカー選手権2022激戦区大阪代表を4局面戦術分析!~2022大阪予選決勝 VS 興国高校~

どうも、さかりーにょです。

第101回全国高校サッカー選手権大阪予選の中央トーナメント決勝が11月12日にヨドコウ桜スタジアムで行われ、プレミアリーグに所属する履正社がタレント集団興國を2-1で下し2年ぶり4回目の激戦区大阪制覇を果たした。

第101回高校サッカー選手権2022大阪予選決勝 履正社 VS 興国

スタメン

スタッツ

(引用:高校サッカードットコム)

システム噛み合わせ図

履正社高校の基本戦術

S級ライセンスを保有し、ガンバ大阪のアカデミーをはじめとした豊富な経験と確かな実績を持つ平野直樹監督率いる履正社高校はこの試合4-4-2のコンパクトな3ラインを形成し、前線からの激しいゾーンプレスで主導権を握った。攻撃面においても、日本屈指の実力を持つ左サイドからの攻撃はもちろん、プレスを見事に回避する「レイオフ」を活用しながら前進する洗練されたビルドアップも特徴である。

【4局面戦術分析】局面➀:攻撃分析

“個の優位性を活かしたサイド攻撃”

これが、2022年履正社高校の攻撃戦術の基本である。このベースを基に主な攻撃パターンは次の3つであると分析。

履正社攻撃パターン①:個の優位性を活かした左サイド攻撃

2022年の履正社高校が誇る2枚看板が徳島ヴォルティス内定の左SB西坂斗和選手と川崎フロンターレ内定の左SH名願斗哉選手である。抜群のスピードと運動量を誇る左SB西坂斗和選手と、独特のリズムのドリブルで縦突破からの左足のクロス、中に切り込んでのシュートやスルーパスで攻撃のキーマンとなっているSH名願斗哉選手のコンビは数的同数であれば高確率で局面を打開できる。

また、履正社は頻繁にサイドチェンジを繰り返しながらスライドのずれや遅れを作り出し、優位な形で左サイドにボールを共有する。

履正社攻撃パターン②:レイオフ&3人目の動きで前進

履正社は横の揺さぶりを多用し、相手の距離感を広くしたうえで楔の縦パスを打ち込む。

縦パスは最終ラインからCHやFWに打ち込まれるケースが多い。また、履正社の楔の特徴は縦パスとセットで必ず斜め後方にサポートの選手がいることである。この「楔&斜め後方サポート」の原則が丁寧に落とし込まれているためにレイオフが容易になり、ダイレクトと3人目の動きを使った中央突破が可能になる。

履正社攻撃パターン➂:引いた相手に対する2列目からのミドルシュート

選手権の大阪予選では強豪履正社相手にゴール前にブロックを構築しカウンターを狙うという戦い方が一般的であった。このような相手に対しては、CHの6番森川楓大選手と15番中鉢大翔選手が積極的にミドルシュートを放つ。実際、この試合においてもミドルシュートが起点となっての得点であった。

履正社攻撃パターン④:豊富なパターンのクロス攻撃と『中3人の原則』

履正社高校は両サイド共に様々なパターンのクロスを備えている。そんなクロスを得点に繋げるための原則が『中3人の原則』であると分析。クロス攻撃の際に履正社が徹底している『中3人の原則』とはクロスに対してFW2枚と逆サイドのSHが必ずペナルティエリア内に配置されるというものである。

事実、この原則を愚直に継続した結果延長で右サイドからのクロスに左SH名願斗哉選手が頭で合わせる形で決勝ゴールを奪って見せた。

履正社ビルドアップの特徴

履正社高校は頻繁にサイドチェンジを繰り返し、相手のスライドの「ズレ」を突く、あるいはスライドの遅れに乗じて発生する数的優位は数的同数を利用して前進していく。

履正社高校は興国高校に対してシステムの優位性を活かしたビルドアップも実践していた

【4局面戦術分析】局面②:ネガトラ(ボールを失った時)

“即時奪還”を主原則とし、ボールを失った際にボールに一番近い選手がボールを奪いに行く

一方で、ネガトラ時にたびたび見られる「3ライン間の広がり」を突かれてライン間を相手に使われるシーンも多い。

また、相手が最終ラインとGKの間にボールを落としてくるロングカウンターに対する対応に不安を抱えており、両CBとGKの連携不足でピンチを招くシーンもあった。

【4局面戦術分析】局面➂:守備

4-4-2のコンパクトな3ラインを形成したゾーンディフェンス

これが、履正社高校の守備の基本である。ここでは①ハイプレス、②リトリート、➂左サイドのカバーに項目を分けて履正社高校の守備分析を進めていく。

①履正社高校式ハイプレス~同サイド圧縮~

履正社高校のプレッシングスタイルは「同サイド圧縮」

2トップの1人による「内切り」のプレッシングをトリガーとして後方の選手が連動する。

このプレッシングによるボールの取り所は「両サイドエリア」であり、SBかSHでボールを奪い切ることを目的とする。

また、プレス回避を図るためにけり込んでくるロングボールに対しては空中戦に強い両CBが対応する。

この際に、クリアするだけでなく、ヘディングでボールを2CHに繋ぐことができる技術の高さも見逃せない。

②リトリート~PARK THE BUS~

押し込まれる展開になると4-4-2の3ラインをゴール前に敷き、ゴール前のスペースを消す

中央からの侵入を試みる相手に対しては、CHの6番森川楓大選手が強靭なフィジカルを駆使してボールを刈り取る。

➂左サイドをカバーする黒子の存在~ダイヤモンドの影~

左SB西坂斗和選手選手はその特性上攻撃に参加することが多く、守備時に自陣に戻り切れないケースが多い。通常であればCBがスライドしてSBのカバーに入るところであるが、それではボックス内でのディフェンスが薄くなってしまう。そこで履正社高校はSBのカバーにCHを採用している。

本試合でも幾度となく突かれる左SBの背後のスペースを15番中鉢大翔選手選手がカバーし続けていた。決して目立つことはないが勝敗を左右する大役を見事にこなして見せた。

【4局面戦術分析】局面④:ポジトラ(ボールを奪った時)

“ゴールへの最短距離を選択する”

これが、履正社高校のポジトラ時の原則であると分析。

ボールを奪うとまず狙うのは相手の背後である。特に背後に広大なスペースがあるときにFWでキャプテンの古田和之介選手を活用したロングカウンターの迫力は抜群である。

さかりーにょeyes

激戦区大阪を見事に勝ち抜いた関西のレアルマドリッド履正社高校。徳島ヴォルティス内定の左SB西坂斗和選手と川崎フロンターレ内定の左SH名願斗哉選手といった個のタレントの能力はもちろん、ここで紹介させていただいた名将平野直樹監督によって細部にまで細かく落とし込まれたチームとしての設計図の完成度もまた履正社高校の試合を観戦する際の楽しみの一つにしてみてはいかがでしょうか?

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