Jリーグ ゲーム分析

【柏レイソル】鉄壁守備&カウンターモンスター「ネルシーニョ3-3-2-2戦術分析」<2022J1第7節セレッソ大阪VS柏レイソル>

どうも。さかりーにょです。

2022シーズン開幕前は降格候補と揶揄されていた柏レイソル。

蓋を開けてみれば7節終了時点で5勝1分1敗の成績で見事首位を走っている(2022年4月5日現在)。

特に目を引くのは僅か「3」という失点数の少なさ。

今回は、そんな鉄壁の要塞を築き上げた名将ネルシーニョ監督式の3-3-2-2戦術をJ1第7節セレッソ大阪対柏レイソルを基に分析していく。

2022J1リーグ第7節 セレッソ大阪VS柏レイソル

スタメン、スタッツ、3ライン配置図は以下の通り。

スタメン

スタッツ

3ライン配置図

局面①:攻撃分析

『カウンターをベースとしたダイレクトフットボール』

これが、ネルシーニョ監督がデザインする攻撃戦術の原則である。

このネルシーニョ監督の攻撃原則を遂行するための攻撃パターンは大きく3つ。

それが、

パターン①:カウンター

自陣深くまで相手を引き込み、背後の広大なスペースを利用したカウンターが攻撃の主軸。

カウンターのパターンとしては、DFやGKからFWへのロングキックを起点とするもの、マテウス・サヴィオ選手の個の力を利用した高速ドリブルの2パターンが主になる。

実際、セレッソ大阪戦ではマテウス・サヴィオ選手の個の力を利用した高速ドリブルカウンターで得点を奪ってみせた。

パターン②:IHを利用した中央突破

マテウス・サヴィオ選手のドリブルやスルーパス、戸嶋祥郎選手のスペースへの飛び出しなどIH2人の個の力や運動量に2トップを絡めた中央突破も柏の攻撃パターンの1つ。

パターン➂:場面は少ないが、後方からのビルドアップ

ロングボール主体の柏の攻撃戦術ではあるが、GKビルドアップの方形も併せ持つ。

この場合にはGKと2CB、1ボランチでひし形を形成し、FWのプレスを回避しながらファーストラインを突破する。中央突破が難しければサイドにボールを迂回し、中村慶太の高精度クロスを駆使したサイド攻撃へとシフトするようにデザインされている。

この際に、1回でサイド攻略ができない場合には頻繁にサイドチェンジを繰り返し、相手のスライドの隙間を突く攻撃を展開する。

さかり―にょ豆知識

柏レイソルはこの試合でもセレッソ大阪にロングボールを打ち込み続けたが、FW細谷真大選手が相手にヘディングで競り勝ったシーンは僅か1回。空中戦で勝率の高いターゲットがいない状況でボールを打ち込み続ける戦術に違和感を覚えた。また、GKのキムスンギュ選手のビルドアップ能力が非常に低く、ロングボールの精度もさほど高くないので攻撃の起点になれないことも大きな課題であると感じた。

局面②:ネガトラ分析

ネガトラ時にはボールを失った選手がファーストプレッシングに行くが、プレスの連動ができていない、あるいはファーストディフェンスが外された場合には全体のラインを数メートル下げてリトリートブロックを形成する。

一方で、攻撃時に可変で両WBが非常に高い位置を取る仕組みなので、ネガトラ時にセレッソ大阪に両WBの裏のスペースを突かれピンチになるケースが見受けられた。

『ショートカウンターを仕掛けられた際の両SB裏のケア』は柏レイソルのネガトラ時の大きな課題であると言える。

局面➂:守備分析

『堅守』は文字通りネルシーニョ監督の代名詞である。

そんな堅守を実現させているのが➀「精密ブロック形成」と②「1対1の守備強度の高さ」であると分析。

➀高密度ブロックの形成

ネルシーニョ監督の守備時の最大の特徴はゴール前に構築する高密度5-3-2のブロックである。

セレッソ大阪のブロック手前での横方向のパス回しには全員が的確な距離・立ち位置を保ちながら完璧なスライドを実行し、苦し紛れに出してくる斜めや縦パスに対して非常に激しいディフェンスで相手から自由を奪っていた。

さかりーにょ的MVP

特に、CBの高橋祐治選手のラインコントロールと1V1、カバーにおける守備対応は非常にハイレベルであり、本ゲームの守備のMVPであった。

②高強度の1対1

柏レイソルの選手は1対1で「闘える選手」が揃っており、矢印がゴール方向に向いた相手のプレーに対しては常軌を逸した守備強度でボールを刈り取る。

セレッソ大阪戦では左WBで出場していた三丸紘選手や攻撃がクローズアップされることが多い中村慶太選手もサイドに流れて機転を作ろうとするセレッソ大阪乾選手を相手に大南琢磨選手と連携しながら高いデュエル勝率を記録した。

局面④:ポジトラ分析

セレッソ大阪のボールロスト位置が示すように、柏レイソルのボールの奪いどころはブロックを形成している自陣ゴール付近であるケースが多い。

しかし、敢えて敵を自陣深い位置に侵入させることでカウンターの際に必要となる背後の広大なスペースを作り出すという狙いもあると分析。

柏レイソルのポジトラのほとんどがFWの細谷真大選手へロングボールを共有し、そこからマテウス・サヴィオ選手との連携で数的同数や数的不利な状況でも広大なスペースと個の力を活かした攻撃を仕掛けるというものであった。

さかりーにょeyes『ネルシーニョ式柏レイソルを破る方法を公開』

『相手を観た適切なビルドアップができない』

これは、柏レイソルが持つ最大の課題である。

攻撃の引き出しがロングボールを駆使したダイレクト攻撃、カウンター、個に依存した突破であり、セットした攻撃を開始できる場所までボールを確実に運ぶ術を持たない。

実際、昨シーズン(2021)も先制して相手が前に重心をかけてきた試合は11勝1敗であるのに対して先制されて相手に余裕をもってプレーされた際には1勝2分21敗という結果が出ている。

引いた相手を崩す術をあまり持たない柏レイソルを倒すためには「いかに先制点を奪うか」を考えることがそのまま勝利の可能性を上げることにつながるのである。

そして、先制点を奪う可能性が最も高い攻め方が柏レイソルのネガトラ時にできる両WBの背後のスペースを突いたショートカウンターであることも併せて明記しておきたい。

-Jリーグ, ゲーム分析