どうも。さかりーにょです。
世界的に4-4-2の最高の使い手とされるセビージャのマルセリ―ニョやアトレティコのシメオネ。一方で、日本で4-4-2の代名詞となっているのがV・ファーレン長崎を率いる松田浩だ。名将バクスターから直接指導を受け、4-4-2が持つ魅力に陶酔した。その後4-4-2が持つ攻守の原則を隅々まで理解し、チームに落とし込む「松田式メソッド」を確立。
今回はそんな日本最高の4-4-2の使い手である松田浩監督の戦術をJ2第4節長崎VS大分の試合を基に分析する。
※試合を見ていない方はこちらでハイライトをご覧ください。
2022J2リーグ第4節 V・ファーレン長崎 vs 大分トリニータ。
スタメン、スタッツ、マッチアップは下図の通り。
スタメン
スタッツ
マッチアップ
本記事の内容
松田式Vファーレン4-4-2のプレーモデル
“11人による攻撃と11人による守備”
これは松田浩監督が求めるサッカーモデルである。松田浩監督がこのモデルを実現するするために採用しているのが4-4-2を使ったゾーンディフェンスと槍のように鋭いストーミングである。
ここからはそんな彼のプレーモデルを実現させるために定められている「立ち位置の原則」と「サッカーの4局面」に関する分析を進める。
松田式V・ファーレン4-4-2のポジショナル原則
松田式V・ファーレン4-4-2にはポジショナルのおける原則が存在する。
【SB】
攻撃時:ボランチとセンターバックの間
守備時:・チャレンジ&カバー&横ずれ / 逆サイドのSBはCBよりも下がらない
【ワイドMF】
攻撃時:・ボランチと2-TOPの間
・二列目からバイタルエリアに飛び出す / ・FWを追い越す
守備時:味方FWの位置とボールの位置を見極めSBにプレスをかける
【ボランチ】
・ワイドMFより後方にポジションを取り、ボールが動くたびにチームの中心に立ち全体をリンクさせる
【FW】
攻撃時:・必ずボールサイドに位置し、ボールを受けることができるポジションニング
・中盤にひいて組み立てに参加
・クロスに対して2人のFWはタイミングをずらして入る
守備時:・まずは背後のスペースを埋める
局面①:攻撃分析
✔攻撃時配置
“少ない手数でゴールまで到達するストーミングスタイル”
これが、松田式V・ファーレンの攻撃における主原則。
この主原則を体現するためにビルドアップ時はCBやSBからシンプルにボールを収めることができて高さ、強さを兼ね備える都倉賢にボールを打ち込んでいく。このロングボールをトリガーにして整えられた3ラインが揃ってラインをUPさせ、前向きでボールを受けた選手が飛び出した両サイドMFの背後にボールを共有するという手法を落とし込んでいる。
少ない手数でのストーミングパターン
実際にこの試合も少ない手数でサイドや背後を攻略して4得点に繋げた。
一方で、単発&単調な攻撃になることが多いのと同時にボールを持たされた際の効果的な崩しのパターンを持たない。加えてストーミングという攻撃の特性もあり創造性に富んだ攻撃があまりなく、エンターテイメント性に欠けることもネガティブな要素だと言える。
局面②:ネガトラ分析
ビルドアップでロングボールを多用するという性質もあり、ボールを失う機会は比較的高い位置が多く、カウンターを受けにくいリスク管理が施されていることが松田式V・ファーレンのネガトラの特徴。
また、ボールを失うタイミングとしては
①ロングボールの精度が低い
②FWがボールを収められない
➂3ラインの距離が間延びし、サポートの位置に適切なタイミングで入れない
というパターンが多い。
ボールを失うと、すぐにボールに一番近い選手がプレスをかける。この時にボールの位置と仲間の位置をお互いに確認して後方の選手のポジションを決め、組織だったゾーンプレスに持ち込む。
局面➂:守備分析
✔守備時配置
「水族館のイワシの群れが“ワッ”と動く動き」を理想とし、相手の攻撃に左右されるのではなく、自分たちでコントロールする主導権を持った守備を目指す松田浩監督の守備組織はまるでボクシングで言うヒット&アゥエイ(素早くピンチを見舞い、素早く自分の場所に戻る)のようにボールを中心に味方の位置に連動しながら横ずれを繰り返しつつ、次々にボールにアポロ―チしていくゾーンディフェンスが最大の特徴。
状況に応じて4-4-2と4-5-1を使い分けながら守備を行う。
ボールを奪う位置はサイドエリア
ボールをサイドに誘い込み、サイドを圧縮してボールを奪い切ることが松田式V・ファーレンの守備のゴールである。
大分トリニータのボールロスト位置を見ても前線からのプレスとサイドでのボール奪取の意図が読み取れる。
ゾーンディフェンスを成立させるために前線、中盤、最終ラインの3ラインの距離は20~25mに保たれており、選手同士がボールだけでなくお互いの立ち位置と距離感を確かめ合っている。
「ボールの位置、次に味方の位置を見ながら守備のポジションを決める」と松田浩監督が語るように守備時には3ラインを第1線・第2線・第3線と分けて守備の役割を明確に定義している。
第1線の役割
2トップの最大の守備タスクはドリブルでの侵入を許さないこと。そして、パスコースを限定し、2ライン目、3ライン目の選手の立ち位置の基準を作る。2トツプがプレスをかける範囲はペナ幅まで。
さかりーにょ豆知識①
守備意識の低い外国人助っ人選手にも必ず守備をさせるために、なぜ守備が必要なのかを丁寧に説明する場を設ける模様。
第2線の役割
第2線の選手たちにはチームとしてのプレッシングをスタートさせる役割を持ち、ボールをサイドで奪い切る形を作る。
第3線の役割
第1線、第2線のプレスが的確にはまるようにコーチングを行う。そして、相手が焦って蹴ってきたロングボールを確実に跳ね返す力強さも求められる。
局面④:ポジトラ分析
V・ファーレンのプレスが狙い通りに決まればボールを刈り取れるのはサイドエリア。
サイドエリアでボール確保できた時の優先順位としては
①ディフェンスラインの背後
②ポケット侵入
➂楔で相手DFを中央に寄せてサイドの裏
というパターンが多い。
さかりーにょeyes『松田式V・ファーレン攻略法』
さて、そんな松田式V・ファーレンの芸術的なゾーンディフェンスはいったいどのように攻略すればよいのか?
さかりーにょは松田式V・ファーレンの攻略法を以下のように分析。
✔攻撃攻略面
パーフェクトなワンタッチプレーと質の高いサイドチェンジを駆使してゾーンディフェンスを破る
スライドが間に合わない状況を作る。具体的には1ラインを超える浮き球パスや足元だけでなくスペースへのパスでゾーンディフェンスを破る
・2FWにプレスをかけられない迂回ルートを作り出し、1stラインを超える
・3ラインのライン間を上手く使う
✔守備面攻略面
・ロングボールを打ち込まれた際に都倉賢に競り勝てるCBを配置する
・蹴らせた後のプレスバックのスピードを上げる
・サイドバックを高い位置に配置せずに、相手WHの飛び出しができない状況を作り出す