ACL ゲーム分析

【ジョホール・ダルル・タクジムFC】東南アジア最強チーム戦術分析

どうも。さかりーにょです。

ACLのグループIにおいて韓国王者の蔚山現代FC、日本王者の川崎フロンターレを抑えて堂々の1位でグループ突破を果たしたジョホール・ダルル・タクジムFC(以下JDT)。

そんな「東南アジア最強」の呼び声高いJDTを率いるのはメキシコ出身の青年監督ベンハミン モラ。

メキシコ代表を彷彿とさせるようなリズミカルナショートパスと、迫力溢れるカウンターアタック、そしてボールを刈り取る強烈な前線のプレスに割り切った強固な5枚のブロック構築。

今回は、高い完成度を誇るJDTの戦術をACLのGROUPIの第2節、蔚山現代FCとの1戦を基に分析していく。

スタッツ

ACL HPより引用

スタメン

JDT式『プレーモデル分析』

ハイプレスから前線の個の力を駆使したショートカウンターを主軸にする。

プレスがはまらないときにはブロックを形成し、ロングボール主体ではなく、ショートパスを駆使したビルドアップの形も併せ持つ。

局面①:攻撃分析

JDTの攻撃のパターンは大きく3つ。

それは、

①ハイプレスから『7秒以内でシュートまでもっていく』ショートカウンター

②リトリート時からのポジショナルビルドアップ

➂ロングボールを駆使したダイレクトプレー

である。

最も得意とする形は最前線の2トップの「限定」ではなく「完全に奪い取る」ことを目的としているような激しいプレスからのショートカウンターである。

実際に、得点シーンの2分のシーンはボールを奪ってから僅か『6秒』、78分のシーンでは激しいプレスからボールを奪うと僅か『7秒』でFWベルクソンが得点を奪って見せた。

また、ビルドアップ時にも「幅」と「深さ」を適切に保ち、アンカーに位置する30番のナチョインサを中心に細かくリズミカルなショートパスで前線までボールを運んでいく。

前線までボールを運べば個人で局面を打開することができるストライカ―の45番フェルナンドフォレスティエリ、9番のベルクソンに一定の自由を与え、アイデアと推進力を駆使してゴールに迫ることができるようにデザインされている。

特に、前半2分に決めた45番フェルナンドフォレスティエリのミドルシュートは個の能力の高さの証明であると言える。

局面②:ネガトラ分析

JDTのネガトラ分析の特徴はハイプレスとリトリートを使い分ける「基準」が明確ではなく、頻繁に1列目と2列目以降が連動できずにライン間の距離も開いてしまう。

また、ボールに一番近い選手がボールを失った瞬間にファーストディフェンダーとしてプレスをかけるが、この時に「限定」ではなく、「奪いに行く」守備をすることがあり、スライディングなどをして一発で外され、容易な前進を許すと同時に、ゾーンディフェンスを簡単に崩壊させてしまうケースも散見される。

局面➂:守備分析

JDTの守備パターンは大きく2つに分類できる。

それが、

①ハイプレスによるゾーンディフェンス

②リトリート時のブロック守備

である。

①ハイプレスによるゾーンディフェンス

JDTのハイプレスは最前線の2トップから開始される。ただの限定ではなく、DFは隙を見せればボールを奪われてしまうほどの勢いでプレスを仕掛けてくる。また、この際にIHが最前線のプレスに加わり3トップのような形になることも特徴の1つ。

このプレスのかけ方とボールの位置で後方の選手の位置が定まり、2列目のエリアでボールを奪取して一気にショートカウンターを仕掛ける。実際、この試合で奪った2得点はいずれもプレスからのショートカウンターで奪ったものであった。

②リトリート時のブロック守備

JDTはリトリート時に5-3-2のブロックを形成する。横はぺナ幅の約40m、縦は15mのコンパクトな3ラインを形成し、『スペースを管理』する。また、楔のパスを入れられた際にはプレスバックを駆使した2ラインのサンドイッチでボール奪取を図るようにデザインされている。

一方で、JDTのディフェンスの課題も散見されたので以下に記載する。

・DFとFWの距離感が長くなる場面が多く、ライン間を使われるシーンが多い

・運ぶドリブルでラインの突破を簡単に許すケースがある

・両WBはサイドの1対1のシーンで相手との間合いが広く、簡単にクロスを上げられてしまう。実際にサイドから容易に上げられたクロスを起点に失点している

・ロングボールに対して競り合いの強度が低いためにボールを収められたり前を向かれてしまうケースが多い

・WBが戻りきれない際に3バックの両脇を使われるシーンが多く、ボランチがカバーするのかCBがスライドするのかが明確ではない

局面④:ポジトラ分析

ハイプレス時にボールを奪えば10秒以内にシュートまでいくようにデザインされている。この際に、2列目、3列目からも猛烈にスプリントをして飛び出してくるのが特徴である。

また、自陣付近でボールを回収した際には幅と深さを使ってボールを保持し、サイドの揺さぶりと楔を駆使しながら前進するパターンも併せ持つ。一方で、ライン間の距離が開きすぎていることが多く、縦パスを打ち込んだ際にサポートポジションに誰も入れていないケースも多い。

さかり―にょeyes

JDTは70分過ぎから急激に運動量が低下するためにリトリートしてから前に出ていく推進力を失うことが特徴。ゲームプランとしては「70分まで」と「それ以降」で戦術の変更を考える必要があるであろう。

また、2トップの9番のベルクソン、45番フェルナンドフォレスティエリに加えて10番のレアンドロ ベラスケスも古典的なゲームメーカーであり、高い個人技を有しているので事前にプレーの特徴を抑えて1対2の状況で常時守備ができるように整えておくことが大切なポイントであると分析。

決勝トーナメント1回戦でのJDTの次なる相手は浦和レッズ。

是非ともレッズの選手やスタッフに読んでもらい、僅かならでも勝利に貢献できればこれほど嬉しいことはない。

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