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【浦和レッズ】リカルドロドリゲス監督の「修正力」ミクロ分析<2022J1第15節VS C大阪>

どうもさかりーにょです。

2022シーズは「常に『主導権』を持ち、より『攻撃的』で、ハイブリッドなサッカースタイル(カウンタースタイルとポゼッションスタイル)の実現」を目指しロドリゲス監督の基で王者への返り咲きを狙う浦和レッズ。

しかし、ここまで14試合を消化して2勝8分け4敗の14位で目標とする優勝争いからは大きく後れを取っている。直近7試合連続引き分けで勝ち切れないゲームが続いていることも懸念材料の1つであり、ぎりぎりの勝負を勝ち切れるかどうかの分かれ目となる監督の「分析力」と「修正力」に疑問の目が向けられ始めている。

今回は、「チームを勝たせられる監督」の必須条件とされる「試合の中での修正力」という一点に着目してリカルドロドリゲス監督が2022J1第15節VS C大阪の試合の中で打った修正を基にロドリゲス監督の修正能力をミクロ分析していく。

スタメン

ミスマッチアップ図

スタッツ

浦和レッズ基本戦術

“ポジショナルプレーによる立ち位置を重視した攻撃と素早い切り替えによるアグレッシブな守備の遂行”

これが浦和レッズを率いるロドリゲス監督が描く理想図である。

これを実現するために、攻撃面では立ち位置を細かく定めて細かなパスワークで前進。守備面では素早くボールを回収するために「切り替え」を追求し、激しくボールを奪いにいく。

※浦和レッズのロドリゲス監督戦術分析はこちらから!

セレッソ大阪基本戦術

「守備では、ゴールを守るのではなく、果敢にボールを奪いに行くアグレッシブサッカー。攻守に全員がかかわり続け、ハードワークする躍動感あるサッカー。」

を目的に、オーソドックスな【4-2-3-1】を採用。

攻撃時はSB、SH、CH、FWが絡んだ複数パターンを持つサイドの崩しが攻撃の主体。

守備時は、1stディフェンダーと相手、ボールの位置によって立ち位置が決まるゾーンディフェンスを採用し、ハイプレス時にはサイドエリアでボールを奪うようにデザイン。一方でリトリート時には4-4-2のコンパクトなブロックからの高速カウンターを狙う。

※セレッソ大阪の小菊監督戦術分析はこちらから!

リカルドロドリゲス監督の修正内容と改善

局面①:攻撃時課題抽出

      現象a):ユンカーに楔のパスを打ち込んだ後のサポートがいない

  原因a):切り替えが遅い。選手の距離感が広い。

  現象b):足元へのパスが多く、相手のインターセプトされる場面が多い

原因b):スペースへのランニングをしていたのは24番の宮本のみ。ほかの選手はすべて足元でボールを受けてからの前進であった。この原因   は「イメージの共有」がなされていないこと。それがないために、ワンタッチや3人目の動きが絡んだ連動性は皆無であった。

  現象c)攻撃の優先順位におけるエラーが頻発

原因c)縦パスや背後へのパスを入れられるタイミングでも横に逃げるパスを選択するシーンが頻発。特に後半36分のシーンは判断ミスによりカウンターのチャンスを逃した。また、攻撃におけるスピードの変化がない。スピードアップのタイミングやトリガーの設定&共有が落とし込まれていないことが原因であると分析。

  現象d) 相手の構造的弱点を的確に分析&攻略できない

原因d) C大阪のディフェンス構造はゾーンディフェンスをベースとして①前線からのハイプレスによる同サイド圧縮と②リトリート時の4-4-2のブロック形成である。

このC大阪が採用する構造上の穴は、

①同サイドに集結させた相手選手を無効にする「サイドチェンジ」

②ブロックを破る2列目、3列目からの飛び出しと、運ぶドリブルの活用

であることは明らかであるが、試合中に上記2つの攻略法が実践されることはほぼ皆無であった。

局面②:守備時課題抽出

現象a)3バックの脇のスペースを利用される

原因a)守備時には右WBの宮本選手がディフェンスラインに吸収され4バックを形成するようにデザインされているが、宮本選手が敵陣深くまで侵入する機会が多く、切り替え時に戻り切れない背後のスペースを利用され続けた。IHやCHが代わりにスペースを埋めるといった動きもほとんどなかった。結果として、1失点目のハンドを誘発してしまった。

現象b)ボールの回収位置が低い

原因b)ボールを回収する位置が自陣内であることが多く、相手の守備が整う前に速攻を仕掛けることはできなかった。この原因は、前線のプレッシングがうまくハマらなかったことであると分析。このプレッシングは最後まで修正されることはなかった。

現象c)1V1の守備強度が低い

原因c)中盤エリアで剥がされてドリブルで侵入されるシーンが多く見受けられた。特に、40番の平野 佑一が25番の奥埜博亮に剥がされるシーンが多かった。個人の守備強度の低さを補うために数的優位を作るかチャレンジ&カバーを徹底させる必要があったがここの修正もなされなかった。

現象d)ラインコントロールの精度が低い&切り替えが遅い

原因d)ラインコントロールが整理されておらず、ライン間に大きくスペースを空けてしまい使われる場面が多かった。また、ネガトラ時の切り替えが遅いのでプレスバックでボールを回収することもできなかった。

リカルドロドリゲス監督の修正内容

上記で抽出した攻守における浦和レッズが抱えていた課題はさかりーにょが実際にスタジアムに足を運び独自に分析したものである。

このような課題に対してリカルドロドリゲス監督が実際に行った修正は、

「疲労した選手の交代」

だけであった。

具体的な交代内容は以下の通り。

後半0分:ユンカー→江坂任

後半22分:アレックス シャルク→ 松尾佑介

後半22分:平野佑一→柴戸海

後半22分:関根貴大→大久保智明

後半35分:大畑歩夢→馬渡和彰

上記はいずれも配置や上記に挙げた課題への修正を試みた変更ではなく、同じポジションの選手を入れ替えるという選手交代であった。

さかりーにょeyes

試合中の分析力&修正力が乏しい”

本試合に関するリカルドロドリゲス監督の采配はこの一言に尽きる。

一方で、戦術の落とし込みや選手とのコミュニケーション能力、モチベーションコントロールの手腕には定評があるために、的確な戦術分析官を隣に置くことで課題は解決できると分析する。

試合のハイライトはこちらから!

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