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【清水エスパルス】ゼ・リカルド監督の『幅』を支配するゾーン戦術をミクロ分析<2022 J1第18節C大阪VS清水>

どうも。さかりーにょです。

不本意な降格争いからの脱却を図るために招聘されたブラジル人指揮官ゼ・リカルド監督。

選手時代の輝かしい実績はほぼ皆無にも関わらずブラジル屈指の名門クラブであるフラメンゴやブァスコ・ダ・ガマなどの監督を歴任し、実績をたたき上げてきた実力をお手並み拝見しにヨドコウ桜スタジアムまで足を運びました!

今回は、そんな清水エスパルス残留の切り札として期待されるゼ・リカルド監督の戦術を2022 J1第18節C大阪VS清水を基に徹底分析していきます!

スタッツ

スタメン

ゼ・リカルド監督の『幅』を調節するプレーモデル

多くのブラジル人と同様に4-4-2のフラットな3ラインを基本とする。

守備時はゾーンディフェンスを採用し、攻撃時はシンプルにチアゴ・サンタナ選手を目がけたダイレクトアタックとサイドエリアを中心としたクロス攻撃をベースとする。

また、試合中に配置を大きく変えることはなく、システムを変化させずに『選手の横幅』を絶妙にコントロールする点がゼ・リカルド式4-4-2戦術の大きな特徴である。

今回は、この「幅」をゼ・リカルド監督が攻撃時・守備時でどのようにコントロールしているのかを現地でさかりーにょが撮影した動画を基にミクロ分析していく。

『幅』を支配するミドルブロック

C大阪に対してゼ・リカルド監督は4-4-2のゾーンディフェンスのセオリーともなっている「最前線がプレスをかけてパスコースを限定し、後方が連動しながらサイドエリアにボールを誘導してボールを回収する」というセオリーとは一線を画すゾーンディフェンスを披露した。

それが、ミドルエリアに3ラインを敷いて相手を待ち構えるという「ミドルエリアブロック」である。

このミドルエリアブロックは横幅38~40m、縦幅が15m~20mで設定されており中盤のスペース封鎖を目的とする。

ミドルサードで「ぺナ幅」の3ラインを設定し、最終ラインからのパスに対して密集状態を作り、ボールを奪うように設定されているのである。

また、相手の横の揺さぶりに対しても幅をほぼ均一に保ったままスライドをするために相手パサーはフリーでボールを持っているにも関わらず「パスの出しどころを見つけられない」というアブノーマルな状況を作り出している。ボールホルダーを敢えてフリーにすることでミドルサードでのスペースを消し、パスの出所を消すようにデザインされているのである。

試合の中でもC大阪のビルドアップ開始起点であるマテイ・ヨニッチと鳥海晃司に対するプレスはほぼかからない。つまり、比較的フリーな状況でボールを配給できる状態にあるがなかなかパスが出ない。この原因こそがゼ・リカルド監督によって仕込まれたミドルエリアブロックによってパスの出しどころ&スペースが封鎖されているからであり、これこそがゼ・リカルド監督のゾーンディフェンスの狙いであると分析。

ゼ・リカルド式ミドルエリアブロックの映像

『幅』を活かした後方の揺さぶりとサイドアタック

ゼ・リカルド監督は攻撃時に大きく選手の立ち位置を変えることがないのが特徴である。

一方で、大きく変わるのが選手間の距離である。特に、守備時に「ぺナ幅40m前後」できれいに整理されていた立ち位置はフィールドの横幅68mに様変わり。

与えられた横幅を最大限に使い、少し深く設定した最終ラインでボールを奪われないことを最優先にしたビルドアップから機を見たサイド攻略が攻撃の基本である。

実際にC大阪のオウンゴールを誘発したクロスもこの横幅を最大限に活用したビルドアップから生まれたものであった。

『幅』という配置的優位を活かすCBからのロングフィード

攻撃時に幅と深さの調節を行うだけで配置を大きく変えないゼ・リカルド式清水エスパルスの攻撃は豊富な崩しのパターンを持つわけではない。持ちろん、「おぉ!」と思わずスタジアムで声が漏れてしまうほどのコンビネーションや3人目の動きもない。

つまり、1V1や2V2などの数的同数の状況を打開できる個の質が大切になる。

そんな個の質を最大限に発揮できるか否かの分かれ目はボールをいかに良い状態で受けることができるかに尽きる。

清水エスパルスが生命線であるサイドの選手が少しでも自分の形で勝負を挑むことができる環境を作り出すために「時間的余裕」を生み出す工夫をしている。

それが、CBからの飛ばしロングパスである。

C大阪は守備時に4-4-2のフラットな3ラインを形成する。そしてボールをサイドに誘導し、同サイドを圧縮してボールを奪う仕組みとなっている。

C大阪の戦術分析はこちらから!

清水エスパルスはこのC大阪の「同サイド圧縮」でボールを奪うという特徴を利用し、CBから局面を変えるロングパスを通して逆サイドの選手が良い態勢でボールを持つことができるような工夫をしている。

『幅』という配置的優位を活かすCBからのロングフィードの映像

さかりーにょeyes

清水エスパルス残留の切り札であるゼ・リカルド監督が採用するゾーンディフェンスは日本で採用されている一般的なそれとは大きく異なる。

ディフェンス面ではあえてハイプレスをかけずに相手の選択肢を最小化し、狭いスペースと高い人口密度の合間を縫って出してくるパスに対して集団でボールを奪うという新たな境地を学ぶことができる。

攻撃に関しても、大きく配置を変えることはなく攻守の切り替え時においてバランスを崩すこともない。特に、通常の4-4-2の戦術と比較して運動量を抑えることができるので夏場や連戦などにおいて新たな戦術オプションの1つとしてストックしても良いだろう。

この試合のハイライトはこちらから!

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