ブロック守備分析 ミクロ戦術分析

【2022年ジェフユナイテッド千葉】尹晶煥監督3-4-2-1ブロック守備ミクロ分析

どうも。さかりーにょです。

勝負師と称され、これまでに日本・韓国で豊富な実績を誇る尹晶煥監督。

特に尹晶煥がデザインする組織的な守備は「芸術的」とも言われ、多くの指導者から憧れられてきた。

今回は、そんな尹晶煥監督の2022年J2第9節ジェフユナイテッド千葉VS横浜FCの試合を基に尹晶煥監督のブロック守備における原則を分析していく。

スタメン

尹晶煥監督の守備哲学

尹晶煥監督の守備の最大の特徴はリトリート時に形成される強固なブロックである。

3-4-2-1を基本布陣としながらも、リトリート時には両WBが最終ラインまでリトリートし、5-4-1のブロックを形成することで「ゴール前のスペースをコントロール」し、面でゴールを守ることを可能にする。

尹晶煥監督のブロック守備原則

陣形

尹晶煥ジェフは自陣での守備ブロック時、下記のような「5-4-1」のブロックを形成する。

各選手の立ち位置は「ボール」、「味方の位置」で決まり、縦横のコンパクトなゾーンディフェンスでスペースをコントロールする。

ブロックの縦幅は約10~15m,横幅はぺナ幅+5m程度にデザインされている。つまり、50×15メートルのスペース内に10人の選手が配置されていることになる。

サイドエリアのブロック守備

横浜FCの選手が幾度となく楔のパスを差し込もうとするが田口泰志と熊谷アンドリューが縦パスを封鎖するポジションに立ち、ボールを意図的に外回りに迂回させる。

ボールが大外レーンに立つ左の武田英二郎、右の山下諒也に入る瞬間をトリガーとし、両WBがアプローチする。また、WBがアプローチにサイドに出ることで空いたスペースにはディフェンスラインがスライドすることで埋めるようにデザインされている。

後手の守備になるためにサイドでインターセプトができるシーンは限られていたが、時間をたっぷりかけさせ、中の準備が整っている状況で上げられるクロスは対応しやすく、さらにCB3枚にはヘディングが非常に強い選手を配置しているために容易に跳ね返すことが可能になる。

ライン間のブロック守備

ブロック形成時にスペースの管理が難しくなるために警戒すべきライン間への楔のパス。仮に楔をいれられてしまった際の尹晶煥監督の対応は以下の通り。

最終ラインは激しく背後から「前を向かせない守備」を行うが、無理にボールを奪いに行くことはしない。ライン間でボールを奪う手段としての約束事は「サンドイッチ」。つまり、ボランチがプレスバックしてボールホルダーにプレッシャーをかけて挟み込むようにボールを奪いとるようにデザインされている。CBの一枚が楔のプレスに出た際には両脇の2CBが中に絞るカバーに入るポジション取りが徹底されており、万が一プレスをかけたCB剝がされた際のリスクヘッジも丁寧に遂行されていた。

尹晶煥監督はブロック守備時にコンパクトなゾーンディフェンスを主原則とし、「ボール」と「1stDFの位置」を基に後方の選手の細かな立ち位置が決まるというブロック守備を敢行した。

また、低位置の守備ブロックにおける大きな課題である「ライン間が非常に接近しているために結合してしまう」という現象は最終ラインのコーチングとセカンドラインの選手たちデザインされた絶妙な立ち位置で見事なまでに回避されていた。

さかりーにょeyes

非常に洗練された尹晶煥監督のブロック守備。しかし、前半43分の失点シーンは狙い通りにサイドへボールを誘い込み、狙い通りなクロスを上げられたシーンであった。

このシーンでは鈴木大輔がボールウォッチャーとなり、自身のマークを見失ってしまったことが直接的な原因であるが、やはり低いラインの守備ブロックは1つのミスで失点を招くリスクが高い。

だからこその守備ブロックには真のスペシャリストが必要であると改めて実感。サイドからのセンタリングに対して、「下がる」のではなく「そのまま」守備ができる、そして90分間ミスを犯さずに継続できるCBがいて成立するのが低いラインでのブロック守備なのかもしれない。

いずれにせよこの尹晶煥監督のブロック守備における原則は再現性が高いために、ぜひ多くのチームで応用してみて頂きたい。

最後に、尹晶煥監督のインタビュー時に用いる流暢な日本語能力の高さに改めて語学の大切さを痛感。異なる国の言語を使いこなすことができるようになったその努力を考えると本当にリスペクトです。

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