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【CAFチャンピオンズリーグ決勝】2022アフリカクラブ王者Wydad Casablanca戦術分析

どうも。さかりーにょです。

2021-2022シーズンのアフリカ大陸クラブ最強を決めるCAFチャンピオンズリーグファイナルがモロッコのカサブランカで5/31日に行われた。

決勝のカードは「アフリカのレアルマドリード」の異名を持つエジプトのAl Ahly(アル・アハリ)と地元モロッコでこれまでに国内リーグ優勝21回、9個カップ、そして2回のCAFチャンピオンズリーグ制覇を誇る古豪Wydad Casablanca。

アフリカサッカーの特徴である高い身体能力を存分に活かした縦に速いサッカーが随所に発揮された魅力あふれる一戦を制したのはWydad Casablancaであった。

今回は、そんなクラブワールドカップへの出場権を決めたアフリカクラブ最強のWydad Casablancaの戦術をCAFチャンピオンズリーグ決勝の試合を基に分析していく。

2022 CAF Champions League Final

Al Ahly 0-2 Wydad Casablanca

スタメン

Wydad Casablancaプレーモデル

「ゴールまでの最短距離から逆算したダイレクトフットボール」

これが、Wydad Casablancaのプレー原則。ビルドアップやプレッシングは特別にデザインされているわけではなく、ロングボールと素早い切り替えからのショートカウンターをメインとした個人の高い身体能力に依存したサッカーを展開する。

局面①:攻撃分析

計算された配置によるビルドアップはほとんどなく、ロングボールを主体としたダイレクトフットボールとショートカウンターを基準として可能な限りゴール前で1V1の状況を作り出すことを狙い、ボールを奪ってから10秒以内にシュートまで到達するシーンが多い。また、3人目が絡んだ攻撃はほとんど見られず、基本は両WGのカットインからのシュートなどの個人による打開やミドルシュート、最大で2人の関係を基に攻撃を仕掛けていく。

局面②:ネガトラ分析

「即時奪回」をコンセプトにボールに最も近い選手がまずボールへのアプローチをかけるが、3ライン間の設定距離が広く、連動したプレスが仕掛けられないという状況多く見受けられる。

3ラインをコンパクトにすることでネガトラ時のボール奪取率を上げることができると分析。

局面➂:守備分析

Wydad Casablancaの守備の特徴は「前線からのプレス」である。

相手のバックのビルドアップに対して4-1-4-1に可変し、1STと2IHの3枚でプレスをかけるようにデザインされている。

このプレスによるボールの回収場所は2か所。

それが、

➀ボールをサイドに追い込んでサイドエリアで回収

②ロングボールを蹴らせてCBで回収

できるようにデザインされている。

一方で、Wydad Casablanca の1アンカーには両脇に広大なスペースがあり、もしビルドアップ時にAl Ahlyがこのスペースを効果的に使える配置に修正できていれば試合展開は大きく変わっていた可能性が高いと分析。

※画像挿入

また、Wydad Casablancaはリトリート時には4-5-1の配置でゴール前を固める守備戦術も兼ね備えている。

局面④:ポジトラ分析

Wydad Casablancaの強みはこのポジトラに凝縮されている。

この試合で奪った2点はいずれもボールを奪ってから「10秒以内」奪った得点であり、前線の選手が高い身体能力と個人技を最大限に発揮した高速カウンターの精度が非常に高い。

1点目の高速カウンター

2点目の高速カウンター

さかりーにょ的Wydad Casablancaの注目選手2名

♯9番:Guy Mpenza

(引用:Guy Mbenza - Player profile 21/22 | Transfermarkt

ベルギーからローン移籍中のコンゴ代表FW。184㎝ながら裏へのスピードと、ポストになれる器用さも併せ持つ。

♯7番:EL MOUTARAJI

(引用:Zouhair El Moutaraji - Player profile 21/22 | Transfermarktt)

CAFチャンピオンズリーグファイナルで2得点をたたき出したU-20モロッコ代表経験を持つ快速ウィンガー。左サイドを主戦場に豊富な運動量をベースにカットインしてからの強烈なシュートや縦への突破など幅広いバリエーションを持つ。

さかりーにょeyes

見事2022年アフリカ最強クラブに輝いたWydad Casablanca。アフリカクラブらしい高い身体能力と多少の数的不利でも積極的に仕掛ける姿勢はヨーロッパやアジアではなかなか見られない魅力がある。一方で、緻密な「ゲームモデル」を作成し、原理原則の下で組織的なサッカーが主流になってきている現代サッカーにおいてはやはり戦術的なレベルの低さは課題であるといえるだろう。

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