2023 Jリーグ ゲーム分析

【祝!アビスパ福岡ルヴァンカップ優勝記念!】アビスパ福岡の勝因を分析!~2023.11.4. Jリーグ杯決勝アビスパ福岡 VS 浦和レッズ~

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アビスパ福岡がルヴァンカップ決勝で浦和レッズに勝利することができた秘訣を知りたいのですが・・・

どうもさかりーにょです。

本記事はアビスパ福岡推しの方のこんな悩みを解決するためにアビスパ福岡VS浦和レッズの2023Jリーグ杯決勝基に分析したいと思います!

本記事の信頼性

・年間平均200試合以上を分析しながらオリジナルの「さかりーにょ分析メソッド」開発
・JFA公認指導者ライセンスB級
・CAF(アフリカ大陸サッカー指導者) C級
・JFAフィジカルフィットネスC級
・IFCO公認サッカー戦術アナリストベーシックコース修了
・AEFCA公認マッチアナリストコース修了
・元海外プロサッカー選手&指導者

2023.11.4. Jリーグ杯決勝 『アビスパ福岡 VS 浦和レッズ』

スタメン

スタッツ

マッチアップ図

『2023.11.4. Jリーグ杯決勝』におけるアビスパ福岡の基本戦術

アビスパ福岡のJリーグ杯決勝における基本戦術は「堅守速攻」である。基本配置は浦和レッズの4-2-3-1に対してアビスパ福岡の基本配置は3-4-2-1。アビスパ福岡は守備時に5-2-3、5-4-1を併用し、「ボールサイドに誘導して前向きでボールを奪う」という共通認識の基、フロントプレッシング、ミドルプレス、ゴール前のブロック形成とそこから繰り出す鋭いカウンターアタックで「ボールを持たずにゲームを支配」し続けた。
本分析では勝利の鍵となったアビスパ福岡の『守備構造』とそこから導き出したアビスパ福岡のゲームモデルを定義する。本分析を基に試合中に感じていたモヤモヤを解消し、これからのアビスパ福岡の試合を今よりも少しだけ俯瞰的に観ることができる方が増えれば幸いである。

『2023.11.4. Jリーグ杯決勝』でアビスパ福岡に勝利をもたらした守備構造

勝因①:整理されたフロントプレッシング構造

アビスパ福岡は浦和のGK+2CB+1CHの4枚のビルドアップ対してCFと2IHの3枚でプレッシング。サイドにボールを誘導して相手のSBにボールが入る瞬間を取りどころとして全員が連動した。
フロントプレッシングの回数はそこまで多くなかったが前線の3枚が高強度でプレッシングを遂行したために後方の選手はボールの出所を読みやすく、前向きでボールを奪ってカウンターに繋げることができた。

勝因②:最大の勝因!役割が明確な『ミドルプレッシング構造』

ルヴァンカップ2023優勝の最大の要因となったのが整理された芸術的なミドルプレッシングだ。アビスパ福岡は試合の大半を以下のようなミドルブロックを形成し、整理されたプレスからカウンターへと繋げ続けた。

アビスパ福岡のミドルプレッシングの特徴は選手の役割と守備エリアが明確であり、それを選手たちが共通認識として理解していることだ。

この長谷部監督によって丁寧に落とし込まれたミドルプレスの構造をさらに丁寧に分析していくと以下の3点の特徴があることがわかった。

構造的特徴①:CFは相手CBに激しいプレスをかけない


CFの山岸は浦和の両CBに対して激しいプレスをかけなかった。この理由はプレスをかけなくてもCBが中央にパスを出すことができないように見事なまでに中央のスペースを封じているからだ。
MFにマンツーマンでついており、FWへのロングボールは福岡の3CBの前では勝機はない。
つまり、フリーでボールを持たせてもSBにしかパスコースがない構造を構築していたのである。
一方で、浦和CBがこの状況を打開するために「運ぶドリブル」を駆使して前進することができていたら状況は変わっていたものになっていただろう。

構造的特徴②:浦和レッズCBからSBのパスがプレス発動のスイッチ


 アビスパ福岡のミドルプレッシングは浦和のCBからSBへのパスをスイッチに一気に強度の高いプレッシングを発動する。SBへのアプローチは基本IHが担当。状況によってWBが前にでることもある。ここでボールを前向きな状態でインターセプトできることが最も理想的な形である。

構造的特徴③:SBへの強い圧力でボールの出所を用意に予想できる


SBからボールを奪うことができなくても非常に強度の高いプレスがかかっているのでSBからのボールの配給先を後方の選手たちは予測することが容易であり、SBからの楔のパスを高い確率で回収することができていた。

勝因③:『PARK THE BUS』ゴール前に築かれた5バックの要塞

アビスパ福岡は押し込まれる展開では5-4-1のブロックを形成し、徹底的にゴール前からスペースを消した。また、最終ラインでは常に「+1」の数的優位の状況を作ることで積極的にファーストディフェンダーがチャレンジに行ける環境を作り出した。

『2023.11.4. Jリーグ杯決勝』でアビスパ福岡に勝利をもたらした『ポジティブトランジッション』

勝因④:伝家の宝刀カウンターアタックの構造

Jリーグ杯決勝で幾度となく浦和レッズに脅威を与えたアビスパ福岡のカウンターアタック。この美しいカウンターアタックの裏にはポジティブトランジッション時における優先順位の整理が丁寧になされていたことが挙げられる。
具体的には、アビスパ福岡の選手たちがボールを回収すると以下の手順でカウンターアタックを発動する。

【手順①:CFへ楔を打ち込む】
CFの山岸はしなやかなポストプレーでフィフティのボールですらマイボールに、的確に味方に繋げた。

【手順②:レイオフしたボールをIHがSBの背後で受ける】
浦和レッズは攻撃時に両SBが高い位置を取るためにその背後にスペースが空きやすい。ここのカバーは岩尾選手が担当しているがデュエルの強度は低い。本ゲームでは特にIHの紺野選手が幾度となくボールを引き出し、2アシストを記録した。

【手順③:クロスに対して3枚入ることが原則】
アビスパ福岡のサイド攻撃の特徴は中に入る人数の多さだ。基本的に、CF、IH、WBの3枚はクロス時に中に入ることが原則とされていると分析。特に逆サイドのWBは長い距離のスプリントが要求される。

アビスパ福岡その他のもろもろ分析


その他勝因につながった勝因は以下の通り。
・3ラインの距離感が一定
・グローリーのバランスを壊した攻撃参加で相手のバランスも破壊

67分失点シーンから見るアビスパ福岡『今後の課題』

67分の失点シーンはアビスパ福岡が抱える課題を凝縮したものだと言える。
失点の原因は大きく以下の3つ。

原因①:クロスを上げたSB酒井に対する金森のプレスが甘い
原因②:最終ラインがバラバラ

特にグローリーと湯澤は5バックを形成できずに後ろ向きでディフェンスをしている
原因③:マークの受け渡しミス
失点シーンでは相手の外側にいる湯澤がマークについていたが、本来であれば内側にいるグローリーがマークをするべき。これは状況が的確に見えているGKが責任をもってコーチングするべきである。

この失点は上記3つのエラーが重なったことによって与えたものであるが、5バックに可変する際にできるCBの脇のスペースへの対応という問題は今後早急にアビスパ福岡が解決しなければならない課題である。

『2023.11.4. Jリーグ杯決勝』から読みとるアビスパ福岡のプレーモデル分析


最後に長谷部監督が率いるアビスパ福岡の「プレーモデル」と「プレー原則」を本試合の分析を基に定義していく。

『アビスパ福岡プレーモデル』


・攻守においてコレクティブにアグレッシブにプレーする
・守備においてはボールを意図的にサイドに誘導し、前向きでボールを奪う
・最も効率的で最短距離でゴールまで到達できるプレーを選択する

『アビスパ福岡攻撃のプレー原則』

【主原則:シンプルで縦に速い攻撃】
<細則>

・ボールを奪った後に10秒以内にシュートまで到達する
・相手を自陣に侵入させることで産みだしたスペースを素早く効果的に使う
・クロスが入る場面ではCF、IH、WBの最低3人がゴール前に入る
・サイドで同数あるいは数的不利の場合には縦に行かずにぺナ角付近から相手DFとGKの間に内巻きのクロスをいれる
・1対1の状況を意図的に作りだす
・相手の守備が整った場合には幅と深さを保ちトライアングルを形成しながら相手SBの背後を取る

『アビスパ福岡守備のプレー原則』


【主原則:連動した守備と強度の高いデュエルの遂行】
<細則>

・ボールを上われた後に5秒以内に奪い返す。難しい場合にはリトリートしてゾーンディフェンスに変更
・ファーストディフェンスのプレスと相手の体の向き状態で後方が連動する
・サイドにボールを誘導して前向きでボールを奪い、カウンターにつなげる
・3ラインの距離感を常に25m程度に維持する。楔のパスはプレスバックと連動して挟み込んでボールを奪う
・WBが攻撃参加してリトリートに間に合わない場合にはCHがスペースをカバーする

さかりーにょEYEs

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アビスパ福岡推しの皆様。初タイトル獲得本当におめでとうございます。
今回はJリーグ杯優勝記念として4つの勝因とプレーモデル、さらには今後に残す課題について分析させていただきました。
プレーモデルなどは今後もアビスパ福岡の試合と照らし合わせながら活用していただけると思います!
ここまで読んでいただきましてありがとうございました!
そして本当におめでとうございます!

引き続きさかりーにょをよろしくお願いいたします!

試合のハイライトはこちらから!

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